【マンガ批評】武田日向「異国迷路のクロワーゼ」　心を魅了する少女・ユネの表情

1 ：まっちょつるぎφ ★：2008/03/06(木) 09:59:00 ID:???
　時は19世紀後半、長崎からパリへ渡った少女・ユネと、その奉公先の看板工芸店で主人のクロードらと過ごす日々を、
美しく決め細かな描写でつづる物語。まずその表紙の愛らしさに心を奪われてしまう。

　魅力的なのは絵だけではない。生まれた国も育った環境も常識とする文化も違う。そんな二人が、初めは互いを
理解できず、衝突を繰り返す。人との接し方一つ取っても、ユネの常識は「まず笑顔」で、クロードの常識は「いきなり
笑顔を向けてくる相手には裏に何かあると思え」と大きく食い違う。そんな二人が次第に信頼を深めていく過程が魅力的だ。
「一度分かり合えればその相手の事は一生大切にする」という根本的な部分には、どんな文化的背景を持とうが、
ぶれは無いのだと改めて気づかされる。

　登場人物たちはみな魅力的で、特にユネの表情は見逃せない。八重歯ののぞく笑顔、黒い瞳に涙をいっぱい浮かべる顔、
おいしい物を食べた時の隠せないうれしさ、とにかくコロコロと表情が変わるユネの魅力に抗えず、次はどんな顔を見せて
くれるのかと思うとページをめくる手が止まらない。自分は二の次で、仕える主人のことを一番に考えて、けなげに
行動するユネや、理知的に物事を考えるクロードらとは対照的に、自分の欲求に正直に突っ走るのになぜか憎めない、
お嬢様・アリスの存在もアクセントを加えている。

　次巻が待ち遠しいが、その間何度でも読み返したくなる作品だ。

異国迷路のクロワーゼ　武田日向　富士見書房　609円

◇筆者プロフィル
中村深雪／青森・伊吉書院類家店のコミックス担当。独自の視点による品ぞろえで地域のマンガファンのニーズに応える書店員。

引用元：まんたんウェブ
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/20080305mog00m200006000c.html
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/images/20080305mog00m200003000p_size5.jpg

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